相続手続きQ&A
1.相続人について
また、特別養子でなければ、実の親の財産も相続できます。
特別養子とは、実の親子関係を断ち、法律的に養父母の実子として扱うことをいいます。
別居していても、戸籍上は夫婦であれば、配偶者の財産を相続することができます。
そのため、亡くなる前に離婚していたという事実がなければ、相続人となります。
ただし、相続人が1人もいないという場合には、手続きを行うことによって、特別縁故者として相続財産を受け取れる可能性があります。詳しくは専門家にご相談ください。
⑧帰化して両親と国籍が異なる。その場合でも相続人になれるの?
本来、相続人であるはずの人であっても、次にあげるような、法に触れる行為をしたときは相続人になれません。
・被相続人、または先順位相続人・同順位相続人を故意に殺害した、または殺害しようとして刑に処された者・被相続人が殺害されたことを知っていながらそれを告訴・告発しなかった者(ただし、殺害者が配偶者もしくは直系血族の場合を除く)
・詐欺や脅迫によって、遺言の作成またはその取り消しや変更を妨げようとした者
・詐欺や脅迫によって遺言書を書かせた者。また、取り消し、変更させようとした者
・遺言書を偽造、改ざん、破棄、隠匿した者
被相続人に対してひどい仕打ちをした場合、被相続人の意思によって相続権を奪うことができます。
ひどい仕打ちとは、以下のようなことです。
・被相続人に対して重大な侮辱をした
・その他、著しい非行があった
2.遺産分割について
作成期限もなく、法定相続分と異なる場合も相続人全員の合意があれば有効です。
ただし、相続税が課税される場合は、税務署に申告する関係もあるため、相続税の納付期限である10ヶ月以内に作成されることをおすすめします。
②相続人の一人と連絡がとれない。遺産分割協議はどのようにすればいい?
その方について不在者財産管理人の選任を家庭裁判所に申立てる必要があります。
その後、選任された不在者財産管理人を相手に、遺産分割協議をします。
また、失踪宣告を家庭裁判所に申立てることにより、法律上、その方は死亡したこととなり、死亡を前提として遺産分割を行うことになります。
ただし、相続人全員が合意すれば、合意した遺産分割協議も有効になります。
遺言どおりに遺産分割したい場合は、遺言執行者を選任するとよいでしょう。
④遺産分割協議に参加していない相続人がいる。この場合も有効なの?
再度、遺産分割協議を行う必要があります。
したがって、遺産分割の対象にはなりません。
3.相続放棄について
ただし、借金を相続しないで他のプラスの財産を相続することはできません。
②被相続人の口座から預貯金を引き出した後でも、相続放棄できるの?
預貯金を引き出すなどの行為は、相続財産を相続人が処分する行為に当たるため、単純承認したものとみなされます。
単純承認とは、財産も借金も含め、亡くなったかたのものすべて相続することを承認することです。
相続放棄という手続きは、家庭裁判所に申し出て、「はじめから相続人でなかった」ということを認めてもらう手続きです。
したがって、「子供がそう言った」と口頭で伝えるだけでは効力が生じません。
とは、全く別の意味であることにも、注意が必要です。
詳しくは専門家に相談してください。
⑥事情があり、死後数ヶ月経ってからその事実を知った。今からでも相続放棄できるの?
亡くなった方の相続人であることをご自身が知ってから3ヶ月以内であれば、相続放棄できます。
4.遺言書について
遺言書は大きく分けると「普通方式」、「特別方式」の2つに分類され、そのうち普通方式の遺言には「自筆証書遺言」、「公正証書遺言」、「秘密証書遺言」の3つがあります。
もっとも手軽に作成できるのは「 自筆証書遺言 」ですが、紛失隠匿の恐れがある、法的に無効になる恐れがあるなどの不安要素もあります。
その一方で、「公正証書遺言」は公証人に作ってもらうため、紛失の恐れがなく、公証力が認められますが、手続きが煩雑で費用がかかります。
遺言に書いて効力が生じるものは、大きく分けると、
1.相続に関すること(長男の相続分は何分のいくつ、土地は次男に相続させる・・、など)
2.財産処分に関すること(預金のうち、○○万円は、どこどこに寄付する、など)
3.身分に関すること(結婚していない人との間に生まれた子どもの認知、など)
の3つがあります。
残された遺族の判断に委ねられます。
遺言書の開封は、家庭裁判所で相続人またはその代理人の立会いのもとで行わなければなりません。これに違反し、勝手に開封すると、5万円以下の過料に処せられます
ただし、癖字であったり、達筆すぎて文字が読めない場合には、裁判所や専門家に依頼し、文字の判読をしてもらいます。
○年○月○日という書き方以外でも、「満60歳の誕生日」などと特定できるものであれば有効です。
⑦他人の添え手の補助を受けて遺言を書いたようだ。その場合も有効なの?
⑧両親が二人でひとつの遺言書を作っていた。その場合も有効なの?
亡くなった方が遺言で家族以外の第三者に財産を贈与したり、特定の家族だけ相続分を少なくすると、残された家族が生活に困ることもあります。
そこで、民法では、相続人に一定の相続分を保証しています。
遺留分があるのは、配偶者、子です。直系尊属(親・祖父母など)が相続人になる場合は、直系尊属にもあります。兄弟姉妹に遺留分はありません。
配偶者と子は被相続人の財産の半分。
直系尊属(親、祖父母など)は被相続人の財産の1/3です。
1. 配偶者と子2人が相続人の場合の遺留分の割合
2. 配偶者と父母(直系尊属)が相続人の場合の遺留分の割合
※配偶者は3分の1※父母は12分の1(6分の1÷2人)
※配偶者が死亡していれば、父母は各6分の1
3. 配偶者と兄弟姉妹がいる場合の遺留分割合
※配偶者は2分の1※兄弟姉妹は遺留分なし。
遺留分を侵害された相続人でも、遺留分を主張するかどうかはその相続人の自由ですから、主張しなければ遺言どおりに相続されることになり、遺留分を主張(遺留分侵害額請求)されると、その限度において遺言の内容が否定されることになります。
⑬遺留分を侵害された。遺留分の割合を相続するにはどうしたらいい?
これを遺留分侵害額請求といいます。詳しくは専門家に聞いてください。
5.生命保険等について
受取人によって異なります。
生命保険の受取人がはじめから指定されている場合は、受取人固有の財産となり、相続財産にはなりません。
その一方で、受取人が亡くなった方の名義であれば、相続財産として法定相続人で分配します。
②生命保険の受取人が「相続人」となっている場合、相続人で遺産分割するの?
たとえば、国家公務員や地方公務員の場合、配偶者が存命であれば配偶者に支払われます。
勤務先にこれらの規定がなければ、遺産分割の対象となります。
6.農家の相続について
①農地等を相続する場合、農業委員会に届出が必要なのでしょうか?
届出をしなかったり、虚偽の報告をすると、10万円以下の過料が課せられますのでご注意ください。
遺言によって被相続人の財産を他人に与えることを「遺贈」といいます。
遺贈にも、財産を特定せずに遺産を一括して与えることを「包括遺贈」、特定の農地や財産を与えることを「特定遺贈」といいます。
農地を遺贈する場合、包括遺贈か特定遺贈かで農地法上の許可の扱いが違ってきます。
相続等により農地の権利を取得した時の農地法第3条の許可の扱い
法定相続人の場合 | 法定相続人以外の場合 | ||
相続 | 届出 | – | |
遺贈 | 包括遺贈 | 届出 | 届出 |
特定遺贈 | 届出 | 許可 |
農地等の相続税・贈与税に関する特例として、納税猶予制度があります。この制度を用いると、相続税・贈与税の納付が一定条件の下で猶予されます。 農地等の贈与・相続には多くの税金を支払わなければならない場合がありますが、この制度を上手く用いることができれば、納税額を大きく減らすことができます。
なお、この特例を受ける場合には、農業委員会発行の適格者証明書を必要とし、税の申告期限までに税務署に申告しなければなりません。
相続税の納税猶予 | 贈与税の納税猶予(生前贈与) | |
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免除要件 | ①相続人が死亡した場合 ②納税猶予を受ける贈与をした場合 ③市街化区域内は、相続人が20年間営農を継続した場合 |
①贈与者又は後継者のいずれかが死亡した時 |
打ち切りとなる場合 | ①農業経営を廃止した場合 ②適用農地等を売渡し、貸付*1 転用・耕作放棄があった場合 |
①農業経営を廃止した場合 ②適用農地等を売渡し、貸付*2 転用・耕作放棄があった場合 |
*1 特定貸付を行った場合は打ち切られません
*2 特定貸付を行った場合は打ち切られません(但し、農地中間管理事業以外は10年又は20年を経過後)