相談事例
平成23年に、Aさんの奥様の相続手続きをお手伝いさせていただきました。
建設技師だったAさんは、現役時代の大半を海外での単身赴任で過ごされ、家のことは全て奥様に任せきりでした。
Aさんが定年退職をされた翌年、奥様は急な病で倒れ、わずか2週間の闘病の末に旅立たれてしまいました。
「何がどこにあるのか分からない?一体何をしたらよいのか?」
突然一家の司令塔を失った家は、完全に機能停止状態でした。奥様の遺産はご実家から相続した不動産の他、預貯金、株式や海外投資等多岐にわたり、全ての手続きを終えるのに半年近くを要した大変な作業でした。
そんなAさんからの久しぶりのご相談は、「自分の相続準備を手伝ってもらえないか。」との事でした。
まず、財産一覧を作成し、幾通りかの分割シミュレーションと納税額の試算をしました。次のステップは遺言書作成です。Aさんは相続が突然起きた時の、残された家族の苦労を身に染みて経験しています。
遺言書があることは、手続きがスムーズに進められる大きな利点です。
しかし、Aさんの本心は、自分が亡き後に長男長女が遺産相続で揉めることだけは何としても避けたいという思いでした。
長男は、お嫁さんが一人っ子という理由もあり、二世帯住宅を建ててお嫁さんの両親と暮らしています。
一方、長女一家はAさんの近くに住み、一人暮らしのAさんを思って頻繁に行き来をしながら細々とした日常の世話をやいてくれています。
ある日、Aさんは長男長女を実家に招集しました。テーブルに財産一覧と試算表を広げ、なんと「遺言書作成」のための協議を始めたのです。
まず、Aさんが自身の思いを子供達に伝え、次に長男長女の言い分を聞き、時にそれぞれの主張が紛議し、たしなめ合い、そんなことを何度か繰り返し、ついにAさんは全員が納得できる遺言作成協議を議長として取り纏められたのです。そしてその協議通りの遺言公正証書を作成されました。
さながら「主役(被相続人)ありの遺産分割協議」でした。
Aさん曰く「せっかく遺言書を作っても、内容が相続人同士で納得ができるものでなかったら、しこりは残ると思う。自分は全員の思いを酌んだ遺言書を作りたかった」 今後も議長健在の限り、状況が変わればまた「協議」をするよ、と穏やかにおっしゃいました。
相続(争族)対策の王道と言われる「遺言」ですが、Aさんがおっしゃるように、「遺言書があれば万全」とは言い切れないのです。
遺言の内容が、特定の相続人を優遇したものだったために他の相続人の不満が噴出、その後の親族関係が険悪になってしまった。
遺産の大半を配偶者に相続させる内容だったため、二次相続の節税対策を講じる事が出来なかった等々、遺言者の独り善がりの遺言が思わぬトラブルの原因になってしまう事もあるのです。
NO.014 公正証書遺言はあったけれど、包括遺贈で大混乱!!
お父様の相続人は、後妻(Aさんと血のつながりはない)と長男(Aさんのお兄さん)、二男(Aさん)と長女(後妻の子・Aさんの妹)の4人でした。(家系図参照)
このケースでは、後妻とAさん、Aさんのお兄さんとの間で養子縁組がされていませんので、後妻の受け取った財産は、将来その子(妹)にしか相続されません。
その事情を分かったうえで、Aさんは、最後まで面倒を見てくれた後妻と妹に多くの財産を受け取ってほしいと考えていました。
ところが事態は急変します。
お父様の遺していた、公正証書遺言が出てきたのです。
遺言があると手続きがスムーズに進むことが多いですが、その内容が問題でした。
「長男に6/12、妻に3/12、二男に2/12、長女に1/12相続させる」包括遺贈の遺言でした。
具体的な財産の分け方が書かれているわけではないので、その分け方で紛糾しました。
母と妹は、「最後まで面倒見てきたのになぜこんなに少ないのか」と悲しみました。
兄は、「面倒を見ていなかったが跡継ぎなのだから当然だ」と主張しました。
Aさんは、この遺言の内容では何も進まないと嘆いていました。
結局、弁護士さんにお願いして、遺産分割協議を行い、財産を分ける事が出来ました。
包括遺贈の遺言を扱うのは初めてでしたが、結果的に遺産分割協議となってしまいました。これであれば、包括遺贈の権利の割合に近づくような特定遺贈をした方が、時間も手間も省けたのになと感じた案件でした。
先日、Aさんより、「主人を亡くしたので相談したい」とお話をいただきました。お話を聞いてみると、実は、Aさんは、正式な婚姻関係にない、いわゆる『内縁の妻』でした。本来、相続権のないAさんを想ってのことでしょう、ご主人のBさんは、遺言を遺していました。
その遺言の内容は、こうです。
「Aさんに2分の1、戸籍上の妻に4分の1、子供二人にそれぞれ8分の1ずつ、包括して相続(又は遺贈)させる」
つまり、相続させる割合のみが定められた遺言です。具体的に誰が何を相続するのかは、話し合い(遺産分割協議)で決めるほかありません。
内縁の妻であるAさんと、戸籍上の妻とその子供たち・・・スムーズに話し合いが進むとは思えません。遺言を遺したBさんも、そう懸念したのだと思います。この遺言には、ある弁護士さんが、遺言執行者として定められていました。
「実際に相続が起きた後は、弁護士さんが遺産分割協議をとりまとめる」
生前、Bさんと弁護士さんとの間では、そういう段取りだったのでしょう。
しかし、ここで番狂わせが起こりました。今回、Aさんからの依頼を受け、私たちが、遺言執行者である弁護士さんに連絡をとってみたところ、その弁護士さんは既に亡くなっていたのです。
結局、遺言執行者不在ということで、私たちが相続手続きの進行・調整を務めました。
内縁の妻と正妻家族との話し合いは決してスムーズとは言えませんでしたが、なんとか遺産分割協議を経て、その後の相続手続きを進めることができました。
遺言執行者というのは、法律や遺言で定められた手続きを行う者のことをいいます。でも、われわれ専門家が、お客さまから遺言作成のお手伝いに加え、遺言執行を受任するということは、単なる手続きを行うことだけがその役目ではないと思います。私たちが遺言書から聞き、感じとった遺言者の想いを、遺言執行の際に遺された家族に伝えることこそが、遺言執行者の役割ではないでしょうか。それを確実に全うしてこその遺言執行だと思うのです。
であるならば、何があっても、遺言執行者が先にいなくなってしまってはならないのです。
そのためには、例えば、会社組織で遺言執行を受ける、遺言執行者を複数名にするといった工夫が必要だと思います。それが、お客さまの遺言を預かる責任だと思います。
お父様(Bさん)が突然亡くなり、相談に来られたAさん。Bさんはいわゆる一人親方で個人事業主でした。晩年は事業がうまくいかず、借金の心配もありました。
そこで相談員は司法書士と相談し、相続の承認又は放棄の期間の伸長申立をし、相続放棄をするかどうかの判断の時間を通常の3か月から6か月に引き伸ばしました。
その間にBさんの会社関係の書類や、個人の郵便や、日記などからの財産調査と信用情報センターでも情報開示を求めました。
様々な方面から調べてみた結果、数年前にBさんのご実家付近の土地改良区へ1万円を支払った領収書が出てきました。但し書きには『平成8年から平成23年分として賦課金計250万円のうち』との記載が…。
ただ、Bさんは不動産を所有していません。しかし請求はBさん名義。
相談員の頭の中は『?』でいっぱいになりました。『なんだろうこれは?』『本当にBさんの借金なのか?』『本当に不動産を持っていないのか?』
このような場合にはじっくりと腰を据えて一つ一つの疑問点を調べていきます。
よくよく調べてみると、土地改良区からの請求の元となる不動産の所有者はBさんの兄であり、Aさんの祖父の相続の際にBさんの兄(Cさん)が引きついだ実家近くの田畑だったようです。
ある程度の情報を得た上で土地改良区に出向き、事情確認。
Cさんの不動産に対する土地改良賦課金は当時、当然ながらCさんに請求をしていたようです。しかし、Cさんは実家を離れ、街の家電屋さんを経営しておりましたが、事業がうまくいかず、雲隠れをしてしまいました。
困った土地改良区は、兄弟であるBさんに何とか支払ってもらえないかと何度もお願いをしたそうです。(実はCさんが雲隠れの前に、賦課金が支払えないから、弟(Bさん)に該当の土地は譲る予定だと土地改良区にお話をしていたそうです。
Bさん自身も当時は支払う義務がないからと、何度も断っていたようなのですが、土地改良区の方をはじめ地域の方にご迷惑をかけているのも心苦しく、月に1万円くらいならと支払った時の領収書が、先に見つかった領収書だったようです。
結果としてはBさんの借金ではなかったのですが、今回のように本人名義で、他人の借金の請求書などが届くことがあるのも事実です。
一見本人名義の借金であったとしても、その借金が、『どんな性質のものなのか』『どんな経緯で今に至っているのか』をしっかりと調べていくことで、責任の所在が明らかになり、不要な支払いを免れることができるのです。
また、今回のような賦課金については、土地改良法により、その時効については、国税及び地方税の例によるとされており、時効完成は5年となります。
もしも、今回の賦課金がBさんのものであったとしても、時効を援用することで、250万円の全額の支払いをすることを免れることができるのではないかと考えつつ、私たち相談員の知識や知恵でご相談者の不安を取り除くことができることをとてもうれしく思い、今後も更なる勉強をしていこうと思いました。
ある日、Aさんが「主人が亡くなったのですが、何をすればいいのか分からなくて・・・」と言って、事務所に来られました。ご主人が亡くなったことを顧問税理士と知り合いの司法書士に伝えても、「相続に詳しくないから」という理由で、きちんと説明してもらえないとお困りでした。
お話をお伺いするうちに、Aさん家族は、ご主人主導のもと、会社を経営なさっていたこと、個人所有の財産は不動産が多く、現預金はわずかであることが分かりました。
事前調査を行うにあたり、法人の株主や発行株式数もご存知なかったので、Aさんと共に調べたところ、ご主人とAさんの持分が2/3以上あること、元従業員の方が株主になっていることなどがわかりました。事業承継が円滑に進むことがわかり、Aさんは「1人では全くわからないことだった」と言って、とても喜んでいらっしゃいました。
法人の確定申告書類からは、Aさんが把握していなかったご主人から法人への多額の貸付金が判明しました。
いくつかの確認事項を終え、事前調査報告書を作成した結果、相続税が発生することがわかりました。
前述のとおり、現状では相続税が支払えない状況でしたが、Aさんは、いくつかの不動産は売却したいという考えでしたので、当センターのネットワークを活かし、不動産売却のサポートもすることになりました。
今回の手続きは、法人の事業承継手続き、相続登記、不動産の売却、準確定申告、預貯金の解約、相続税の申告と多岐に渡りました。Aさんには家族で話し合って理解していただくこと、決断していただくことがいくつもあり、Aさんはご主人が亡くなり、法人経営の舵を取らなければいけない立場で、多忙な毎日を過ごしていらっしゃいました。
お立場を考えて、面談は極力少なく、ただし専門的なアドバイスはしっかりとすることを意識しました。面談の際は、当センターが提携している司法書士、税理士、不動産仲介業者も同席してもらいました。その結果、「少ない回数の面談で多くのことをアドバイスしてもらえたことはとても嬉しかった、とても安心できた」と大変喜んでいらっしゃいました。
どの案件も、遺族の方のお気持ちやご事情を汲んでサポートするのは当然のことですが、今回は「どんな手続きが必要で、いつまでに何をすべきか、何から手をつけるべきか」を専門家の助けを借りてサポートできたことを実感しました。相続手続支援センターの強みを発揮できたものだったのではないかと思います。
NO.010 父を亡くし、認知症の母を世話する長女の選択肢は…
昨年お父様を亡くされ相続手続支援センターをご利用いただいたAさんより、今般、「母親が息を引き取り、また是非手続きをお願いしたい」旨、ご依頼がありました。
お父様の手続きの際、お母様は既に在宅型介護で寝たきりの状態で、明らかに判断力もなく、お医者様からも、そう長くはない…と宣告されているという状況でした。
Aさんは一瞬お母様が亡くなるまで、お父様の相続手続きに着手するのを待つことを考えたようですが、やはり基本通り、成年後見の後見開始の審判の申立てをすることにしました。
家庭裁判所から成年後見人として身上監護はAさん、財産管理は司法書士が選任され、お父様の相続人は、お母様、Aさんと、ご兄弟2人の4名でしたが、成年後見人の司法書士を交えての遺産分割協議により、結果、お父様の財産は全てお母様が相続することになりました。
その間、Aさんはお母様の介護をしながらご自分のお仕事もされ、その上成年後見人としての仕事も重なり、センターでもきめ細やかなサポートを心がけてはいましたが、大変な思いをされておりました。
そして、一年後にお母様が亡くなり、Aさんに「やっぱり母が亡くなるまで父の手続きを待っても良かったのでは…」というお気持ちが湧いたのも事実の様でした。
さて、お父様死亡時ではAさんと兄弟2人の3名の間で「自宅の分割をどうするか」が問題であったようですが、Aさんの献身的な介護はもちろん、成年後見の手続きを踏んで、苦労して一旦母親名義に変更した努力を2人の兄弟も認め、今回のお母様の相続では、預貯金は三等分し、Aさんが自宅を引き継ぐことで円満に遺産分割協議の内容がまとまりました。
Aさんより、父親の相続の際に家庭裁判所の手続きに時間と費用はかかったものの、きちんと成年後見の手続きをしたおかげで、母親の相続では兄弟間でトラブルなく話し合いがついたことに対し、当センターへの信頼感が増して、今回の相続手続きもお願いした旨お話があり、基本通りに進めることの重要性を認識した一件でした。
このたび、急逝したお母様のご相続のことでA子さんよりご相談を受けました。お父様はすでに他界され、相続人はA子さんと兄のS男さんです。
A子さんは席にお座りになるとすぐ、以下のようなお話を一気にされました。
―――自分は嫁いだ身であり、実家近くに住む兄夫婦に実家のことを助けてもらう機会も多かったので、父の相続の時には、色々と取り仕切ってくれた兄に全てを任せ、遺産分割等手続きの際にも兄に言われる通り、各種書類に署名・実印を押印した。
ところが母の葬儀の翌日。兄から「実家を売っていいか」という連絡があった。「母の突然の死で気持ちの整理もつかない時に、実家売却の話なんて・・・」と思わず口にしたところ、兄の奥さんから出た話だということが分った。私にとって実家は大切な場所、急逝した母のことを思い出にしてしまうことが怖くて、もう少しだけ時間を置いてから行って形見分け等しようと思っていた。亡くなってすぐ、しかも小姑からの話に兄も一緒になっていることがショックで、その後、時間の経過とともにその想いが怒りに変わってきた。もしかしたら父の相続の時も、兄は兄嫁の指示で動いていたのではないか?当時、父の通帳の残高も確認してないし、そういえば避暑地に父が所有していた土地があったと言っていたが、それはどうなったのか?――
元々仲の良かった兄妹だったようですが、兄嫁の一言によって、あってはならない争族になろうとしていました。もしかしたら兄嫁は、先々のことを考えていたのかもしれませんが、相続人以外の方が口を出すには早すぎる段階でした。
普段は、どちらかと言いますと、被相続人の生前に介護などお世話をしていた相続人から、何もしなかった相続人(兄弟や姪甥)との間でどのような遺産分割をするべきか、というご相談の方が多くありますが、どのような立場であっても、相手の心の琴線に触れてしまってからでは取り返しのつかないことになってしまいます。
我々は、遺産分割協議にまでは入れませんし、もし相続人の間で妥協点の折り合いがつかない場合は、法律通りに進めていかなければならない事態となります。そうして争族→争続となってしまうのです。
※争族は、相続の造語です
Aさんからご依頼のあった相続手続きは、預貯金の解約についてでした。ご自身の体調が優れず、お一人での手続きにご不安を覚え、相談にお見えになりました。
被相続人はAさんのお兄様で、預貯金の通帳やカードもAさんがお持ちでした。他に預貯金はないとの事でしたので、ご申告のあった各金融機関の手続きを進めていきました。
全ての手続きを終え、最終報告の為にAさんのご自宅を訪問したところ、一枚のハガキを手渡されました。ハガキには、ゆうちょ銀行の「定期貯金満期のお知らせ」と印字されていました。
手続きを承った時に確認した相続財産の中には、ゆうちょ銀行の通帳もあり、通帳記帳による残高確認と定期預金の計算書を取得して資産把握したはずなのですが、ハガキの上に記載された記号番号は相続人のAさんさえも把握していないものでした。
故人が銀行に口座を所有しているが、口座番号等が不明の場合は、各行に事情を説明し、照会を行なっていただきます。
口座が確定していて手続きを進める際でも、手続き申告した口座以外で被相続人の所有財産に漏れがないかを、銀行側が積極的に調査して教えて頂くケースもあります。
ですが、ゆうちょ銀行の場合は、相続の手続申請者よりの現存照会の申込みがない限り、手続き事務を行なう部署に調査する権限がなく、調査をしないそうなのです。
歯切れの悪い回答でしたが、個人情報の保護の観点、そして全国2万店におよぶ郵便局が窓口になるゆうちょ銀行で受け付ける口座情報を各郵便局の端末で検索するシステムが存在しない為、口座情報を検索するためには、拠点となる貯金事務センターで調査をする必要があり、その為に現存調査の申請書を提出していただいているとのことでした(貯金事務センター・相続課)
また、手続き漏れを防ぐために、書類提出時に窓口の職員が「他に口座をお持ちでないか」と尋ねて、ある場合には現存照会をお願いしているのが、現状との回答もいただきました。
今回のケースでは何故手続き漏れがおこったのか?
不明預貯金が無いとお聞きし、そのまま鵜呑みにしてしまい、お伺いした口座の内容の解約手続きを進めました。窓口で書類の提出時、他の口座がないかどうかの問合せがあったかどうかは正直覚えていません。ただ、聞かれていたとしても、他には存在しないと思い込んでいたので、「ありません」と答えていると思います。
相談員として、「思い込み」「ゆうちょ銀行の現存照会の流れを知らなかった」等の知識の不足など反省すべき点は多々あります。
ただ、貯金事務センターからの回答を聞いて、いちばん恐怖を感じたのは、「今までに手続きを終えている方々で自分たちの知らない故人の財産が、誰にも知らされることなく眠ったまま生活を続けているかもしれない」という事実です。
故人のゆうちょ銀行の通帳を手にした相続人が、「他にも口座があるかも知れない」と考えるケースは、例えば、相続人が予想している相続財産と通帳記載の金額があまりにもかけ離れているとか、何かしらの事情がない限り、ありえないと思います。
なんの疑いもなく手続きに臨んで、窓口で「他に口座はありませんか?」と聞かれたとしても「ないです」と答えるのが普通ではないでしょうか?
今回のケースでは定額貯金の満期のお知らせ通知が、故人住所に同居していたご親族に届いたことで、もう一度手続きをさせて頂く形となってはしまいましたが、なんとか全ての手続きを終えることができました。
全国で休眠している口座がどれほどなのか、金額がどの程度なのか、そして、幸いにも口座の発見に至り、あらためて手続きをするケースがどの程度あるのか知るすべはありません。
せめて、センターにお越しいただくお客様には、無用のご心配をおかけする事のないように、相続手続きをお手伝いする相談員として、より正確に、確実に手続きを進めていけるように、知識の獲得につとめ、気を引き締めて手続きに望んでいこうと思います。
葬儀社さんからご紹介のAさん。お父様と取引のある金融機関から紹介された税理士の方が、当初相続手続きを進めていました。お父様が亡くなり、相続人はお母様と子のAさん、お姉さんの計3名。依頼している税理士さんと何やらうまくいかず、センターへお越しになりました。
「実は、お願いしている先生、依頼して3ヶ月にもなるのに手続き状況を教えてくれないの」と。
お話を聞いていると、突然お父様が亡くなり、この3ヶ月パニック状態。相談をしても先生は素っ気ない態度、何より見積もりや手続きのスケジュール等も聞かされていないとのことでした。
我々でできることをお話ししましたが、既に依頼している先生ですから、スムーズに進めてもらうよう頼みましょうと話をして、その日は終わりました。
数日後、Aさんから「〇〇先生は解約しましたので、こちらでお願いします」と連絡がありました。相続税申告が必要なので、すぐに資料を預かり税理士とともに手続きを進めました。
Aさん家族はとても話好きで、ご相談をしているとあっという間に2時間、3時間。一家の大黒柱がいなくなり心細く、心配事が尽きないようでした。
我々相続手続支援センターの相談員は、有資格者ばかりではありません。税金の話や遺産分割の話など、知識はあるもののお客様の具体的なお話に応えることができず、もどかしい時もあります。
ただ、専門家としてだけではない目線でお話を聴き、寄り添いサポートをしていくことができるのは、単に仕事としてではなく、目の前にいる方のお手伝いを、支援をしたいと心から思っているからではないでしょうか。
Aさんの相続手続きは相続税の申告期限にも間に合い、銀行口座の解約、不動産の名義変更等、無事完了しました。完了報告の際に、Aさんから「今後も長いお付き合いを宜しくお願いします」と言っていただけて、とてもうれしかったです。
相談者のお話をじっくりと聴く、相談員として一番大切なことに気づかせてくれたAさんでした。
いつものように無料相談を受けました。
その日来社したご相談者は、Aさんと子供3人(長男Cさん、長女Dさん、二男Eさん)。夫Bさんが亡くなり自宅の相続について・・・というご相談でした。
妻であるAさんが全てを相続する。というお話で協議はまとまっていたので、手続きの流れを説明し、すでに取り寄せていた戸籍関係をお持ちだったので拝見すると、夫のBさんはAさんとは再婚でした。長男Cさんと長女Dさんが幼少期の頃、お二人の実母は亡くなっており、その数年後にAさんと再婚し、Eさんがお生まれになっていらっしゃいました。
もしも、この先Aさんがお亡くなりになったら相続人はEさんのみ。頭をよぎったそのときに、Aさんがおっしゃいました。
もし私に何かあったら、相続人はEだけになるのですよね?そんな話を聞いたことがあって・・・
そうなると後々子供たちがギクシャクしてもいやだし、それぞれ平等に分けて欲しいと思っているのだけれど、やはり遺言を作ったほうがいいのかしら?あなたたち(子供たちに向かって)もそれでいいわよね?
Aさんのおっしゃる通り、現段階でAさんに万が一のことが起こった場合の相続関係をご説明し、遺言も大事だが、まずは養子縁組してはどうかとご提案しました。
相続税の基礎控除が3,000万 +(相続人の数×600万円)となった今、養子縁組で相続人の数が増えることのメリットと、すでにご結婚されているDさんを養子縁組しても姓が変わることがないことなどをお話しました。
ご家族全員が納得され、その縁組の手続きをされるとおっしゃって帰られました。
一番安心されていたのは、Eさんだったように感じました。
ご家族全員で相談に来られた場合、どこまでお話をしていいものか悩むこともありますが、今回はAさんからお話をいただき、こちらからもお話がしやすかったことでご提案もできました。
また、核家族化が進み争う相続が増える中で、こういったご家族と出会えたことに、この仕事をしている喜びを改めて感じる出来事となりました。
弊社の相続セミナーに参加された、Aさんからのご相談でした。
約30年前にAさんのお父様が亡くなった際に、お父様が遺した自宅の土地を分割した内容についてのご相談でした。
詳しく話を伺うと、当時Aさん(二女)のお父様が亡くなった際の法定相続人は、お母様とは離婚されていたこともあり、Aさんと、Aさんのお姉さまの長女BさんとAさんの妹の三女Cさんの3名でした。
そしてその際の土地の分割内容は、Aさんが3分の1、長女Bさんが3分の1、三女Cさんが3分の1という、正に絵に描いた様な法定相続分の割合で共有の相続でした。
当時はどのように分割するのが良いのかを相談するところも無く、とりあえず三姉妹平等にと思い法定相続分で共有にて分割したと言うことでした。
それから約30年。三姉妹それぞれ家庭を築き、共有で相続した自宅には長女Bさん家族が生活している状況でした。そんな中長女Bさんが突然病に倒れ亡くなったということでした。
長女Bさんには長男と嫁いだ長女がいますが、いずれはこの自宅は長女Bさんの長男が守っていくことになります。
しかし、この自宅の土地の権利はAさん、亡くなった長女Bさん、そして三女Cさんの共有名義です。
またAさんと三女Cさんには共にお子さんがいらっしゃいますので、当然将来的なことを考えてもこのままでは土地の権利は亡くなった長女Bさんの長男には引継がれることはありません。
そこでAさんは自分の3分の1の名義を亡くなった長女Bの長男の名義に変えることは出来ないか?と言うことでした。
その意向は、三女Cさんも同様に考えていると言うことです。
ここで提案できる内容としては、「生前贈与」か「公正証書遺言による遺贈」になります。
色々と調べると土地の評価も高額になることもあり、生前贈与となると贈与税も含めかなりの諸費用が必要となります。一方、公正証書遺言による遺贈であれば、相続人以外にも財産を引継がせることもできますので、亡くなった長女Bの長男にも引継ぐことができますし、「死」を原因による財産の移転なので、贈与税の対象にもなりません。(相続税の対象にはなりますが)
そこでAさんCさん共に公正証書遺言にて土地の権利を「亡実姉Bの長男に遺贈する」と言う内容の公正証書遺言を残すことになりました。
今回の相談は、過去の相続の際に平等にと思い土地を三姉妹にて共有で分割したことが問題でした。当時は良かれと思い平等に分割したつもりが、時が経ちそれぞれの状況も変わり過去の分割内容を悔やむ結果となりました。
今回の相談を受け、土地を兄弟姉妹による共有にて相続することは、よほどの事情が無い限り避けたい分割方法であると改めて痛感する事例となりました。
Aさんから、先日お母様が亡くなったということで相続のご相談を受けました。
Aさんのご自宅に伺うと、見覚えがある建物でした。
ご自宅にあがらせてもらうと、エンディングノートが出てきました。
お母様は以前、当社のエンディングノートセミナーに参加していただいた方でした。当時、Aさんのご自宅に伺わせてもらい、エンディングノートの書き方と生前の相続相談をしました。
お母様は、既にご主人を亡くしており、子供が二人いるのですが、別居しているため一人暮らしでした。
そのため、自分が亡くなったときに子供がスムーズに手続きができるように、また子供二人が揉めないようにという事でエンディングノートを書いていました。
Aさんから、お母様が書いたエンディングノートを見せていただくと、ご自身の財産の内訳・交友関係のある方の名前と住所と連絡先・子供二人へのメッセージ等が、詳しくしっかりと記入されていました。
Aさんに話を伺うとエンディングノートに交友関係のある方をしっかりと書いてあったおかげで、離れて暮らしていたが良い葬式ができたとおっしゃっておられました。
また、当社にて相続手続きをさせていただきましたが、財産の所在がすぐにわかり、スムーズに手続きを行う事ができました。
最後に言うまでもありませんが、子供二人に対してそれぞれの思いと揉めずにこれからも仲良く過ごして欲しいというメッセージが伝わったため、揉める事なく手続きを進める事ができ、Aさんはエンディングノートをお母様が残してくれて良かったとおっしゃっていました。
きっと天国にいるお母様もご自身の相続で子供が揉めることなく、無事に手続きを終えられて安心されていると思いますし、エンディングノートの効果・重要性を感じた事例でした。
Aさんの父親が亡くなりました。
父親の法定相続人は、母親とAさんの二人です。
母親は認知症で施設に入院中です。
父親がご存命中は母親の成年後見を行っていましたが、父親の相続手続きのため、新たに成年後見人を立てる必要が出ました。
Aさんでは、利益相反関係になってしまうため、父親の孫でAさんの次男が成年後見の申立を行いました。その際に次男を成年後見人候補者として、念のためにセンターが紹介した司法書士を第2候補者として申立を行いました。
裁判所の返答は「相続財産が7,000万円あり、母親の法定相続分は3,500万円と高額になるため、裁判所の管轄の司法書士か弁護士を成年後見人に任命します。」というものでした。
被成年後見人の財産が高額になると、最近は上記のようになってしまうようです。
成年後見人の使い込みが問題になっているという新聞記事が何年か前に掲載されていましたが、その影響のようです。
Aさんは自宅で療養していた叔母の面倒を見ていて、最後まで看取りました。
落ち着いてから、相続手続きのご相談をいただき、ご支援することとなりました。
叔母様には、姉が2人、兄が一人いました。
法定相続人は、すでに亡くなっている長姉の息子2名、次姉、すでに亡くなっている兄の長女(Aさん)の4名です。
被相続人の叔母様は、ゆうちょ銀行にて取引がありました。
ゆうちょ銀行の取引は以前のお住まいの時にもあったようで、認識されていない預金が漏れていないか確認するために預金照会をゆうちょ銀行に依頼しました。
預金等照会書で過去の預金取引を照会してもらうには、過去のお届けの住所を申告し、その申告した届出住所をもとに照会するとの事でした。
被相続人が過去どこで住んでいたかを相続人が把握していない場合は、過去の預金が漏れてしまう事も想定されます。
相続人のAさんが、叔母様は現住所の他には以前の住まいしかなかったとおっしゃっていました。今回、戸籍・住所の履歴の確認を行い、間違いないことを確認しましたので、預金が漏れている事はないと思われます。大切な相続財産を漏らす事なく手続きして差上げる事はとても大切な事だと思いました。
お母様を亡くされたAさんから、相続手続きのご依頼がありました。
相続財産は、不動産と金融資産でした。
まずは、全ての不動産の登記簿謄本を取り寄せ、権利関係を確認しました。
お母様名義の土地は叔父様が自宅敷地として利用し、叔父様名義の土地はお母様が自宅敷地として利用していました。
親族間でお互いの自宅敷地を借り合うという不自然な状態が長い間続いていましたが、特にお互い不都合もなかったため、気にはなりながらもそのまま放置していた様でした。
しかし、後の世代のこと、不動産の売却などの将来の不測の事態などを考えると、一刻も早く自宅敷地を各々の名義にすることが望ましいと判断しました。
そこで、相続手続きの完了後「不動産の交換の特例」を活用した名義変更のご提案をしました。
通常、不動産を交換した場合には、各々が不動産を売却したものとして、所得税・住民税が課税されます。
しかし、「交換により譲渡する資産の時価と取得する資産の時価との差額が、これらの時価のうちいずれか高い方の価額の20%以内であること」など、一定の要件を満たすことで、売却がなかったものとして課税を繰り延べることができる特例が設けられています。今回は、その「不動産の交換の特例」を活用することで、所得税・住民税のご負担なく自宅敷地の名義を変更することができました。
Aさんには、相続手続きを当センターにお願いすることで、年来の懸案も一緒に解決できたと、大変喜んでいただくことができました。